音の旅のつづき (5/19 ソリストたちの調べ)

チェロとハープが開いた“音の旅の入口”をくぐると、 そこには、未来の音楽を切り拓く4人の若きソリストが待っている。 彼らは、ただの若手ではない。 国内外のコンクールで頭角を現し、すでに「次代を担う存在」として注目される実力者たち。 今日の舞台は、その才能が一斉に火を灯す瞬間でもある。

春田 傑(クラリネット)

ニールセン:クラリネット協奏曲

第93回日本音楽コンクールクラリネット部門1位ほか数々の賞を受賞、 “表現力の幅”と“物語性のある音楽”で審査員を唸らせてきた逸材。 ニールセンの協奏曲は、孤独・葛藤・爆発・祈りが渦巻く難曲だが、 春田はそのすべてを“語る力”でねじ伏せる。 音が跳ね、叫び、ささやき、そして光へ向かう。 「クラリネットって、こんなに人間的なのか」 そう思わせる瞬間が必ず訪れる。

清水 陽介(チェロ)

チャイコフスキー:ロココ風の主題による変奏曲

2024年プラチスラバ国際チェロコンクール1位ほか他国内外のコンクールで受賞多数、 “音の深さ”と“透明な歌心”で高く評価されてきた新星。 ロココ変奏曲は、優雅さの裏に繊細な技巧と音楽性が求められるが、 清水の演奏はそのすべてを自然体で超えてくる。 音が立ち上がるたびに、 「チェロはこんなにも語れるのか」 と驚かされる。 虚無僧のチェロが語った“序章”を、舞台上で彼が受け継ぐ。

©T.Tairadate

榎 かぐや(オーボエ)

アルビノーニ:オーボエ協奏曲 ニ短調

第91回日本音楽コンクールオーボエ部門1位他数々のコンクールで上位入賞し、 “祈りのような音色”と“空気を変える一音”で注目を集める存在。 アルビノーニの協奏曲は、静けさの中に情熱が潜む作品だが、 榎の音はその二面性を見事に描き分ける。 一音で空気を変え、 一息で景色を変え、 聴く者の心をそっと掬い上げるような音楽を奏でる。 ハープが開いた“新しい世界への序章”を、彼女の音がさらに広げていく。

栗原 壱成(ヴァイオリン)

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 第1楽章

第93回日本音楽コンクール1位、海外ではベートヴェン国際コンクール1位と国内外の数々のコンクールで最高位を獲得し、 “圧倒的な集中力”と“まっすぐな音楽”で聴衆を惹きつけてきたヴァイオリニスト。 メンデルスゾーンの第1楽章は、情熱・疾走感・抒情が一気に押し寄せる名曲だが、 栗原の演奏はそのすべてを“嘘なく、まっすぐに”届けてくる。 音が走り出した瞬間、 「この人は、これからどこまで行くのだろう」 と未来を想像させる。 今日の舞台で最も“ワクワク”を体現する存在。

■ 岡本 陸(指揮)

©︎T.Tairadate

4人の個性豊かなソリストたちを束ね、この舞台にひとつの流れを生み出すのが岡本陸である。
それぞれ異なる音楽世界を持つ協奏曲をつなぎ、ひとつの“旅”として描き出すこと――それは決して容易ではない。

しかし岡本は、音楽の呼吸を深く捉え、ソリスト一人ひとりの個性を引き出しながら、全体を有機的に結びつけていく。

対話し、寄り添い、ときに導く。
その指揮は、舞台上のすべての音に方向と意味を与える。

4つの才能が出会うこの瞬間を、ひとつの物語へと昇華させる存在である。