現代音楽界の鬼才にして大御所ハインツ・ホリガーが登場。オーボエ奏者、作曲家、指揮者として非凡な才能を発揮しているこの“世界的人間国宝”の音楽に触れるだけでも足を運ぶ価値がある。
前半は自身の音楽家人生に深い影響を与えた作曲家と作品が並ぶ。20世紀ポーランドの代表格ルトスワフスキの二重協奏曲では、初演で独奏を務めたホリガーのオーボエと名手・吉野直子のハープの共演が大きな見どころ。また12人の弦楽器奏者が異なる音符を弾く難曲を生体験できる貴重な機会でもある。続くハンガリーの大家ヴェレシュは作曲家ホリガーの師匠。「哀歌」はその師バルトークの死を悼んだ音楽で、これにルトスワフスキが同じ経緯で書いた「葬送音楽」が続く流れは実に意味深い。
後半は明朗なメンデルスゾーンの名作。CDで快演を展開している「イタリア」をはじめ、ロマン派音楽を巧緻に再創造するホリガーの清新な解釈と、前半との対比が注目点となる。