ヨーロッパを拠点に、指揮者、ピアニスト、作曲家と多方面で活躍する才人・阿部加奈子が定期公演に待望の登場。ラヴェルとチャイコフスキーの晩年の名作中心のプログラムで魅了する。パリ音楽院で学び、フランスでの実績が特に光る彼女のラヴェルは、もはや本場物といえるレパートリー。「亡き王女のためのパヴァーヌ」の繊細な美感や、ピアノ協奏曲のモダンな色彩の表現は、大いなる聴きものだ。
協奏曲の独奏は三浦謙司。堅牢なテクニックと奔放かつ雄弁な語り口で魅せる名手にして、パリで行われた2019年ロン=ティボー=クレスパン国際コンクールの覇者ゆえに、フランスのエスプリを兼備した快奏の予感が漂う。後半はチャイコフスキーの「悲愴」交響曲。阿部がこのおなじみの名曲をどう描くのか? 興味津々だし、新鮮な感動への期待値も高い。さらにはラヴェルともども、向上が際立つ新日本フィルの各セクションのパフォーマンスにも熱視線を注ぎたい。

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