約1年半のプロベーションを経て、2021年10月に正団員になりました。これまで人との出会いに恵まれ、助けていただいたおかげで、いまの自分があるのだなと、あらためてお世話になった方々への感謝の念が湧き起こってきます。

音楽を始めたのは岡山の中学の吹奏楽部です。部活紹介で先輩がドラムロールを披露してくれたのに興味を持って、打楽器をやってみたいと思ったのがきっかけです。熱心に練習するのをみた部活の顧問の先生が縁をつないでくださり、国立音大の附属高校に進学することができました。けれどもいざ入学してみると、まわりのレヴェルの高さについていけず、苦しい期間が続くことに……。違う道に進んだほうがよいのかもしれない、と思い詰めた時、担任の先生が親身に話を聞いて「もうちょっと頑張ってみようよ」と励ましてくださいました。なんとか試練を乗り越えることができたのは、先生のおかげです。

大学に入ると、打楽器専攻の仲間ができて、どんどん打楽器が楽しくなっていきました。入学当時夢中になっていたのはドラムセットで、国立音大のビッグバンドをめざしていたのですが、2年生の時、同期がやっていた学生オケを聴いて胸をつかまれ、オーケストラに興味が湧いてきました。決定打となったのは、恩師、清水太さん(現・東響首席ティンパニ奏者)との出会いです。ドイツから帰国された清水さんからオーケストラの面白さ、ティンパニの深い世界を学び、ティンパニを極めたい!と将来の道を定めました。

ティンパニストに求められるのは包容力ではないかと思います。どのようなことを求められても、いったん受け入れる。そのうえで、みんなが納得できるような“最適解”をみつけたいと常に思っています。そのために心がけているのは、人の話をたくさん聞くことです。そしてどの声も決して否定せず、妥協するのでもなく、新しい音をみつけにいきたい。
そのことで、最も良い道が自然に導かれるに違いないと信じています。まだ理想でしかないですし、とても難しいことですが、いつもその心を忘れずにいたいです。

なにかを「創る」人になってほしい、なにかで「一番」になってほしい、そしていつも「朗らか」であれ、という思いから創一朗と名づけてくれた両親に感謝して、力強くも、みなを包み込んで、人の心を穏やかにできるような音楽をつくっていきたいです。