今年2月から正団員になりました。コロナ禍でのプロベーション期間となりましたが、コンサート再開後に演奏できた時、何にも代えがたい喜びを仲間と共有することができたのは貴重な体験でした。

フルートは地元島根の中学の吹奏楽部で始め、すぐ夢中になって、高校の頃から専門に習い始めました。島根大学に進んだのも音楽を勉強したかったからです。卒業後は、9年ほど、島根大学附属中学の特別支援学級で、感性豊かな子どもたちを非常勤で教えながらフルートを勉強していました。同時に夜は料亭のバイトもしていましたから、3足のわらじですね。仕事を通して、人間にとって何が大切か、自分はどうしたいのか……と考える時間にもなりました。

やはり音楽をやりたい、フルートを吹きたいという強い気持ちから、いろいろなコンクールを受けて賞をいただくなかで、人との出会いにも恵まれ、オーケストラのエキストラで演奏したりするうちに、フルート1本でやっていこう!と決意を固めました。N響アカデミーで勉強を続け、札幌交響楽団の副首席として活動した5年弱を経て、このたびNJPの首席になることができて、たいへん嬉しいです。音楽以外のいろいろな仕事をしてきた経験があるからこそ、音楽を職業にできる幸せを噛みしめています。

首席奏者として、美しい旋律を魅力的に奏で、演奏のクオリティを追求するのはもちろんですが、セクションやオーケストラ全体の雰囲気をつくることも大切だと思っています。ですから、なるべく笑顔でいるようにしたいですし、いいと思ったら声を出したり拍手をしたりするようにしています。今は会話しにくい状況ではありますが、仲間たちとも、気になることがあれば話をしたり、コミュニケーションをとったりするようにしています。

趣味は音楽、というほど、音楽以外に特に好きなこともなく、1日中フルートのことを考えている感じです。練習の時間以外も音楽の本を読んだり、楽譜を見たり。それが今はすごく楽しい。この楽しさ、幸せを、一人でも多くの人と分かち合うことができるといいなと思います。コロナのたいへんな状況のなか、NJPのコンサートに足を運んでくださるお客様は本当にありがたく、皆さまに笑顔になっていただけるよう、精一杯頑張りたいです。

(2021年9月・10月号プログラム掲載)