この5冊の時刻表は、戦後間もない昭和 22 年から、新幹線ができる前の国鉄全盛期と言える昭和 36 年までのものです。昭和 52 年に復刻されたのを古書店で買いました。

列車の本数が少なくぺらぺらだった最初のものから、特急列車が復活し、急行や長距離列車の本数もどんどん増えていって、昭和 36 年のものはこんなに厚くなっています。

 

眺めていると、いろいろな光景が浮かんでくるんです。田舎の畑に囲まれた線路を列車が走っていく様子、車窓からみえる家々、そこで暮らす人々、踏み切りで待つ家族づれ……。

 

僕も、母の実家がある新潟の柏崎で、おじいちゃんに連れられて踏み切りに汽車を見に行ったのを覚えています。それから毎年、柏崎に帰省するときに、普段乗らない列車に乗れるのを心待ちにしていました。鉄道大好き少年で、音楽をやる前は鉄道関係の仕事につきたいと思っていたんです。

いまは新幹線で早く行けるようになりましたけれど、僕は断然、鈍行列車派。残念ながらもういまはありませんが、 床が木張りで、ドアを手であける、旅情を感じさせるあの鈍行列車が好きなんです。中学になってから は、一人で鈍行を乗り継ぎ12 時間くらいかけて新潟まで行くのが楽しみでした。

時刻表の読み方は、小学校2、3年生のときに教えてもらいました。みると、柏崎に行くまでの列車と駅名が並んでいる。

いまこの時間に、自分とは別の場所で走っている列車が載っているのを見て、わくわくしたのを覚えています。この5冊の時刻表はどれも自分が生まれる前のものですが、見ていると、 のんびり旅を楽しんでいた当時の様子が浮かんでくるような気がするんですね。

今より不便だけれど、 逆に活気があった時代、旅らしい旅ができていた時代というんでしょうか。「阿房列車」を書いた内田百 閒先生は、「用事がないのに汽車に乗りに行く」というふうに書かれていますが、そういう旅に憧れます。

古地図や古い写真を見るのも好きです。「温故知新」という言葉がありますよね。音楽でも、古い演奏の録音を聴くと、自分の足元が見えるような気がします。

イメージがはっきりして、すとっと落ち着く感じがするんです。(談)

時刻表の読み方は、小学校2、3年生のときに教えてもらいました。みると、柏崎に行くまでの列車と駅名が並んでいる。

いまこの時間に、自分とは別の場所で走っている列車が載っているのを見て、わくわくしたのを覚えています。この5冊の時刻表はどれも自分が生まれる前のものですが、見ていると、 のんびり旅を楽しんでいた当時の様子が浮かんでくるような気がするんですね。

今より不便だけれど、 逆に活気があった時代、旅らしい旅ができていた時代というんでしょうか。「阿房列車」を書いた内田百 閒先生は、「用事がないのに汽車に乗りに行く」というふうに書かれていますが、そういう旅に憧れます。

古地図や古い写真を見るのも好きです。「温故知新」という言葉がありますよね。音楽でも、古い演奏の録音を聴くと、自分の足元が見えるような気がします。

イメージがはっきりして、すとっと落ち着く感じがするんです。(談)