趣味で金継ぎを始めて6ヶ月ほどになります。金継ぎとは、器の割れ、欠けやヒビを漆で接着させ、金粉や銀粉で化粧を施す、日本の伝統技法です。10年ほど前、妻が大切にしているマグカップを落として、持ち手の部分を割ってしまったことがきっかけで、金継ぎという修復技法があることを知ったのですが、やるのは大変そうだなぁとそのままにしていました。昨年ふと思い立って調べたところ、意外と簡単に材料を手に入れることができるとわかり、チャレンジしてみたら案外うまくいって……。その後、知り合いから頼まれたりして、少しずつ作品が増えています。綺麗に仕上がると、待ってくれている人に喜んでもらえるのが、何より嬉しいですね。

もともと道具好き、手先を動かす細かい作業が好きなので、自分で道具を揃えて、あれこれと工夫したり考えたりしていくことがすごく楽しい。便利な「金継ぎセット」をあえて使わず、漆やそれを固めるための強力粉など材料をこつこつ揃えて、トライ&エラーを楽しみながらやっています。物の本によると、西洋の陶磁器の修復は、どこに傷があるかわからないように直し、実用でなく、飾って保存することが目的であるのに対し、金継ぎは実用的(食用にも安全)で、できた傷をありのまま受け入れ、修復による継ぎ目を「新しい景色」として楽しむ美学があるそうです。愛着があるものをよみがえらせて大切に使い続けるだけでなく、そこに新たな美を見出す、というところも気に入っています。金継ぎを通して、人との出会い、不思議なつながりも体験しました。

漆の硬化に時間がかかるため、金継ぎには待つことが求められます。もともとせっかちな質なので、最初はうまくいってるかなぁと、あちこちいじって、かえっておかしくしてしまったりしました。「よくなるまで待つ」─ 金継ぎから学んだ教訓です。急いで無理やり結論を出さず、待つことでしっくりいくこともある。音楽をやるうえでも大切なことかもしれないなと思っています。

(2020年1月)