大学4年、22歳の春に首席オーボエのオーディションに思いがけず合格することができ、入団してから27年。この9月で50歳になりますから、人生の半分以上をNJPで過ごしたことになりますね。野球少年が憧れの球団をめざすように、僕にとって、小澤さん&NJPは子どもの頃から憧れの存在でした。1982年の大阪ザ・シンフォニーホール開場記念シリーズで小澤さんとNJPが演奏した「第九」のテレビで見て、その録画を何度繰り返して聴いたことか。当時中学生でしたが、その憧れのオーケストラで今も演奏を続けられることの幸せを感じています。

入団当時、右も左もわからないまま首席になった若造を迎えたのは、この7月で引退された白尾彰さんら木管・金管の “レジェンド” たちです。百戦錬磨の面々に囲まれて、こちらは「運命」も「第九」も初めてなのですから、がむしゃらにやるしかなく、ひたすら予習・復習の日々でした。色々なことをしでかしましたが、何をやっても怒らず、時に面白がり、温かく見守ってくれた先輩方には本当に感謝です。そして、小澤さん、朝比奈さん、ゴールドベルク先生、アルミンクさん等の指揮者たち、ソリストたちから受けた影響の大きさは言うまでもありません。これまで国内外のオーケストラからお誘いを受けてもNJPにいることを選んだのは、NJPこそが自分の居場所で、ここから発信することにこだわりたいと思ったからです。自由で風通しよく、オープンマインド。レジェンドたちから受け継いだNJPスピリッツを、これから次の世代につないでいけたらいいなと思っています。

地元の人に愛される、おいしい定食屋さん。星いくつのレストランもたまにはいいけれど、日々の生活を豊かに幸せにしてくれるのはそういうお店ですよね。NJPもそういう存在になれたらいいなと思います。新シーズン幕開けのトパーズでは、上岡マエストロのもとで初めて協奏曲のソロを吹きます。僕自身大好きな曲ですので、とても楽しみです。新シーズンも、たくさんの方に楽しみにいらしていただけると嬉しいです。