この8月まで1年間、NJPを休団してフランクフルトに留学しました。日本で受けたマスタークラスで出会ったクリストフ・シュミット先生のもとでさらに勉強したいと、フランクフルト音大の大学院に入りました。週1回のレッスンに加えて、コレペティの先生のレッスン、さらにオーケストラスタディのクラスを受講するという充実した1年間でした。戻ってきて久しぶりにトリフォニーホールで音を出したとき、何かが変わった、という感触がありました。何が変わったのか、まだ自分のなかで整理できてはいませんが、留学で得たことをNJPでの演奏にも生かしていきたいと意欲を燃やしているところです。

ドイツでの1年間の収穫は、これまでやってきたこととは違う方法、演奏の文法を学んだこと、でしょうか。音楽的にも、技術的にも、です。ドイツでは、よりはっきり弾くことが求められましたので、日頃から自分がめざしている「インタープレイ(相互作用)」をより深めることができましたし、音の出し方も変わったと思います。ドイツ語については、留学直前に集中的に勉強して行ったので日常生活に不自由ない程度には喋れたものの、細かいコミュニケーションは難しいレヴェルでしたので、その分、自分を開き、相手がどう感じてどう作用するか、これまで以上に敏感になったように思います。また、半分以上が外国人という多国籍なクラスでしたから、日本のように「言わなくてもわかる」のが前提でなく、自分の思っていることを言わないと先に進まない、ということを日々体験したのも良かったです。上岡マエストロがフランクフルトに寄られた時に、一緒にご飯を食べて雑談したのも、楽しい思い出です。

留学を経て、できることは何でもやりたいとますます貪欲に音楽への思いを高めています。将来的には「コントラバスだから」というのをなくしたい。ヴァイオリンや他の弦楽器と同じように旋律を弾き、アンサンブルをし、かつ土台を支え…というように、ソロ、室内楽、オーケストラと、何でも貪欲に挑んで、コントラバスの魅力を伝えられる奏者になるのが夢です。戻ってきたシーズンに、子供の時から大好きだったシューベルトのシリーズに参加できるのも縁を感じます。一人一人の個性を尊重しつつ、全員でひとつの楽器のようにまとまるようなセクションにしていきたいと思っています。

(2019年10月)