20年のアメリカ生活を終えて家族とともに帰国し、日本で新しいキャリアを築いていこうとした時、これまでアメリカでやってきたことがつながる仕事ができたらいいな、と思っていました。「これをやってみたい!」と感じたのが、オーケストラでセカンド首席のポジションで弾かせてもらった時でした。指揮者を筆頭に、奏者と阿吽のコミュニケーションを取りながら音楽を動かしていくことができる楽しさに、とても魅力を感じました。
小4から原田幸一郎先生につき、自分も先生のようにアメリカに行くものだと信じて勉強していました。高2の時、クリーヴランド・カルテットのファーストヴァイオリン、ドナルド・ワイラーシュタイン先生と出会い、クリーヴランド音楽院へ。大学ではボストンにあるニューイングランド音楽院に移り、そこでポール・カッツ先生によるベートーヴェン・カルテットのセミナーに参加したことが転機となりました。カルテットの魅力にどハマりして、これを自分の仕事にしていきたいと思うようになりました。それまでもアンサンブルは大好きでしたが、あらためて、人と呼吸を合わせて一緒に弾くと、自分1人で出せる以上に音楽が深まったり広がったりして、音色や作品を4人で高め合って
いける感覚に感動し、カルテットの世界をもっと追求していきたいと思いました。
最初はカルテットでファーストを弾いていたのですが、あることをきっかけに、将来カルテット奏者になりたいことを相談した際、ワイラーシュタイン先生から「君はセカンドに向いてるよ」と言われたことが次なる転機となりました。それから、色々な方とのアンサンブルでセカンドを弾くようになり、その楽しさに目覚めていったのです。低音を弾く時の気持ちよさや、メロディをサポートしながら、リズムやハーモニーで音楽を立体的にしていく面白さ。メロディラインを輝かせつつ、自分の色をふっと出す瞬間など、ただただ楽しくて楽しくて……。ふたたび「これだ!」と自分のやりたい道に出会った気分でした。
アメリカ人の仲間と11年続けたジャスパー・カルテットを終えた時、ひとつ成し遂げたという実感がありました。次は何をしよう……。アメリカで過ごした20年間、日本にいる両親にほとんどコンサートを聴いてもらえていないこと
が気懸りでした。音楽家になるために日本で育ててもらった両親が元気なうちに、もっとコンサートに聴きに来てほしい。それが帰国の一番のきっかけになったかなと思います。
いま、NJPで過ごす時間は楽しくて実りがあり、たくさんの学びがあります。NJPの仲間たちは仲が良く、音楽的な面だけでなく良いコミュニケーションが取れるのも嬉しいです。自分の成長がオケにつながると信じて、NJPをさらに高めていける人になっていきたい。みなでそういう高みを目指したいと心から思っています。
(2026年10・11月定期演奏会プログラム掲載)