それは、わが家の愛犬(トイプードル)のヘアカットの仕方を、いつもお願いしているカリスマトリマーの西岡さんに教えていただいたことがきっかけでした。難所である頭の毛をカットする際、まず中心、つまりてっぺんの長さを決めてからサイドの位置を定めて、それからその間をカットしていくとバランスよくきれいな丸みが出ますよ、というお言葉通りにやってみたところ、本当にうまくできたので
す。その時、「これって同じだ!」とひらめいたのが、楽器のリード作りのことです。それまで、こうするとうまくいく、という経験則でやってきましたが、リードも中心とサイドを決めてその間を削っていくと、自然な丸みが生まれて、吹きやすくなったのです。このように言語化できたことで、あらゆる美しさには比率が関わっていることをはっきり認識できました。

比率を意識するようになったのは、昨年から再放送されているドラマ『大草原の小さな家』の影響もあります。幼い頃から何度も観て、DVDも全巻持ち、台詞も覚えているほど大好きなのですが、今回リマスター版であらためて鑑賞し、これまで見逃していたことに気づきました。まず音楽のすばらしさ。どの楽器の使い方も的確でとてもいい塩梅です。“ここぞ”という場面で登場するのがイングリッシュホルン。そしてその演奏が実に見事なのです! さらに、絶妙なカメラワーク。これって黄金比?と思うような、比率へのこだわりが感じられる構図に、つい見入ってしまいます。

思えば、防音室や音楽ホールもまた、音が心地よく響く比率で成り立っているはずです。その空間を自分の音でどう満たすのかと考えた時、「これも同じだ」と思いました。中心である自分と、サイドである壁・床・天井。それらが定まることで、響きは決まってきます。美しいもの、すばらしいものには普遍性があり、すべて理にかなっている。感覚的なものと思いきや、きちんと説明できる“物のことわり”が存在する、ということを、あらためて感じました。

リードの素材である葦は、気候に左右されやすいものですが、私はそこに自然とのつながりを感じられるところが好きです。よい材料でよい音が出た時には、「育ってくれてありがとう」と愛おしく思います。けれども最近、葦が硬くなってきているように感じます。葦の質の比率を温暖化が変えてしまっているのではないでしょうか。地球に生きる一人として、自然をもっと大切にし、世の中にあふれる美しい比率をできるだけ見逃さないようにしたい。物のことわりに忠実に従って、肩に力を入れずに生きていけたらいいなと思っています。

(2026年5月定期演奏会プログラム掲載)

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