40歳になった頃、「10年後、自分はどうありたいか」と考えるようになりました。残り時間を考えて、何か将来のヴィジョンを持ちたいと思ったのです。その時、室内楽をもっと勉強したいという気持ちから、室内楽を弾くのに適した弓を買いました。誰に話したわけではないのですが、その頃から不思議と室内楽の機会が増え、NJPの仲間や、高校、大学の同級生、先輩・後輩からもお誘いをいただくようになりました。また、NJP室内楽シリーズにもたくさん出演させていただき、おかげでとても充実した40代を過ごすことができたと思っています。

その活動のひとつに、姉・田村安祐美とのデュオがあります。姉は1995~98年NJPの第1ヴァイオリン在籍で、私がエキストラで参加したのも姉からの誘いがきっかけでした。出産を機にヴァイオリンから距離を置いてしまった姉を見て、一緒にやろうよと声をかけて活動を始め、25年ほど続けています。堀川高校、藝大の同級生で結成したクラリネット、ピアノとのトリオでも、毎回、演奏機会の少ない知られざる名曲に挑戦。カルテットでは、ずっと勉強したいと思っていたベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲に取り組んでいます。デュオ以外はどれも友人たちが立ち上げてくれた企画で、自分から一歩を踏み出すのが難しい性格の私は、いつも仲間に助けられ、勇気をもらっています。NJPの若い仲間たちとのアンサンブルでも、いつも刺激をたくさん受けて、感覚の更新をしています。

アンサンブルをする上で大切にしているのは、仲間への信頼と自分への違和感、その両方です。いま何が起きている? みんなはどうしたいと思っている? 自分は違う方向を向いていないか? など。そして、そのなかで自分の音楽を表現できているか、常に自発性と協調性のバランスを意識しています。若い時は、室内楽の膨大なレパートリーに圧倒されて、音を追うだけで必死でしたが、年を重ねて、ようやく“音と音の間にある何か”を感じられるようになった気がしています。フレーズひとつ弾くにも、音と音の間に、言葉や色が見えてくる、というのでしょうか。室内楽をやればやるほど、曲を立体的に捉え、自分の音の立ち位置をより敏感に察知できるようになったと感じています。それがオーケストラでの演奏に影響しているのはもちろんのことです。

これからも、仲間との時間を大切に、ゆっくり作品に向き合っていきたい。若い時に演奏した曲も、いま弾くとまた違う景色が見えてくるのも、この年齢になってこその醍醐味です。まだまだ勉強したい曲がいっぱいあり、学びには終わりがありません。仲間と一緒に長く弾いていられるように、心身ともに健康で、柔軟でいたいと願っています。

(2026年4月定期演奏会プログラム掲載)


スタッフ編集特別コンテンツ【こぼれ話】

お姉様の田村安祐美さんとのヴァイオリン二重奏のコンサートを始めた当初は、同じ環境で幼少期を共に過ごしてきたこともあり、「息の合った美しい演奏」と高く評価されてきました。その響きは多くの聴衆を魅了してきましたが、近年ではさらに新たな輝きを放っています。
それぞれが異なるオーケストラでの経験や、多彩な室内楽で培った豊かな音楽性を持ち寄ることで、デュオとして新たな境地へと到達しつつある手ごたえを感じているそうです。
進化を続ける音楽を、ぜひ会場でお楽しみください。


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