関西フィルとの名コンビで知られる藤岡幸夫が、ロシア&北欧の名曲を披露する。

 今回は何よりシベリウスに目を向けたい。同作曲家の権威・渡邉曉雄の愛弟子であり、その演奏に伝統のある英国で活躍した藤岡にとって、シベリウスは大の十八番。ここは、持ち前の熱気に師譲りの王道表現を加えた、唯一無二の音楽が期待される。演目も興味津々。高揚感満点の有名曲「フィンランディア」はもとより、第3番以降で最も知られながら意外に生演奏が少ない交響曲第5番を耳にできるのが嬉しい。同曲は作曲者の生誕50年記念式典のために書かれた明朗な祝祭的音楽で、最後の和音6連打も聴きものだ。

 前半はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。こちらは2007年チャイコフスキー国際コンクールで優勝した神尾真由子の極め付きのソロを味わえる。強靭な名手・神尾は、年々深みを加えているので、演奏機会の多い本作では、現在の特長を体感する楽しみも生まれる