昨年7月、第1ヴァイオリン・フォアシュピーラーとして入団しました。演奏ごとに毎回新しい発見や気づきがあり、とてもやりがいを感じています。

 オーケストラに深く関わるようになったのは、20歳の誕生日にオーディションを受けて合格したN響アカデミーで3年間勉強したことからです。5歳から故郷の倉敷でヴァイオリンを始め、小学校3年から神戸までレッスンに通い、桐朋学園の高校、大学に進みましたが、それまではソロ、室内楽がメインで、オーケストラの弾き方を本格的に勉強したのはN響アカデミーが初めてでした。オーケストラ全体にアンテナを張って演奏すること、枠のなかで最大限自分を生かすように演奏することの面白さを知り、目を開かされる思いでした。この時に、将来はオーケストラに入りたいと目標が定まりました。

 フォアシュピーラーは色々なことをやっているので、役割はこうです、と説明しにくいのですが、コンサートマスターが仕事をしやすいようにアシストすること、他のセクションとの橋渡しをすること、と言えるでしょうか。弦楽器内だけでなく、管楽器とのアンサンブルを意識することもあり、オーケストラに入ってから以前より他の音が聞こえるようになったと感じています。NJPでは、フォアシュピーラーは、コンサートマスターの隣(1プルト裏)か後ろ(2プルト表または裏)に座りますが、なかでも「2プルト表」は今まで一番経験してこなかった位置で身体の向きや音の聞こえ方など慣れるまで難しいと感じました。

 大切にしているのは柔軟さです。本番ではリハーサルとは異なる事態が起こることが多く、リハーサルを経て「こうしよう」と自分なりに決め込んでしまったがために、本番で想定外の角度からの事態にうまく対応できなかったことがありました。その時の反省から、その場に応じて対応できるよう、常に柔軟でいるように心がけています。また、舞い上がってしまったりすると冷静な判断ができないので、音楽には情熱的に、でもどこかで冷静な自分を持つように意識する、というのでしょうか。すべて演奏の現場で経験から学んでいくことで勉強の日々ですが、とても刺激があって楽しいです。NJPで長い間フォアシュピーラーを務められた堀内麻貴さんとは1年ご一緒することができたのですが、その間、これまでの経験についてお話をうかがうことができたのは貴重な体験でした。

 ヴァイオリンには膨大なレパートリーがあって、とてもすべてを弾くことはできませんが、オーケストラを基盤に、ソロ、室内楽などできるかぎり色々な曲にチャレンジして、生涯を通して音楽的にも人間的にも成長していきたいです。本番を仕事として淡々とこなすのではなく、そこで得た発見や気づきに意味を見出して追究していけたらと思います。

実家で飼っていた愛犬ペコと

(2025年9月定期演奏会プログラム掲載)