ヴァイオリンを始めたのは幼稚園の年長になった頃です。当時、福井県敦賀市に住んでいましたが、通っていた幼稚園にヴァイオリン・ラボができたことがきっかけです。それまで習っていたピアノや、幼稚園でのサッカーはあまりうまくいかなかった自分が、ヴァイオリンは最初から音を出すことができたんですね。「音を出せた」ことが嬉しく、ヴァイオリンがとても好きになりました。ラボの先生が、子どもたちに幅広く音楽に触れさせ、音楽が楽しいことを教えてくださったことも大きかったと思います。

小学校1年の時、両親に連れていってもらった福井のコンサートホールで初めて生のオーケストラを聴き、すごいなぁと憧れるように。ちょうどその頃、TVドラマ「のだめカンタービレ」が大人気で、それを見て、オーケストラで弾くことに興味をもつようになりました。そうであれば、専門的な勉強をしたほうがよいのではと、京都の桐朋学園子どものための音楽教室に片道1時間半かけて通うことになったのです。

福井では「自分は世界一ヴァイオリンがうまい!」と得意になって弾いていたのが、桐朋の教室では基礎を一からやり直すことになりました。それでもやめることなく続けられたのは、やはりヴァイオリンが好きだったから。そして支えてくれた両親のおかげです。母は毎週のレッスンに付き添ってくれ、ああだったね、こうしたほうがよいねと話し合うことでリテラシーを共有することができました。父も発表会の後に感想を言ってくれたりしました。音楽の専門家ではないフラットな環境だったからこそ、家族で一からビルドアップできたのかなと思っています。とても感謝しています。

京都堀川音楽高校に進んでからも、同級生と自分を比較して焦ったり、悩んだりすることが多く苦しい日々でした。自分のペースで勉強すればよいと気づくのに、高校3年間かかってしまった感じです。それに気づいてからの京都市芸大での4年間は本当に楽しかった。四方恭子先生の厳しく、かつ愛情に満ちた指導、いい仲間にも恵まれ、いま自分に必要な勉強は何なのか、考えながら勉強できるようになりました。東京藝大の大学院に進んでからも、具体的に課題を作って、より深い勉強ができたと思います。

昨年(2024年)6月にNJPの正団員になりました。オーケストラでも室内楽でも、何回かに一度「これは一生忘れられない演奏会になるだろうな」と思う時があるのですが、それをもっともっと増やしていきたいですし、NJPの演奏会が、お客様ひとりひとりに“忘れられない演奏会”と思っていただけるよう、全力を尽くしたいと思います。

4月には初めて室内楽シリーズのプロデューサーを務めます。NJPではセカンドですが、このプログラムでは、学生の頃よく弾いていた“ファーストの玉井”を聴いていただきたいと思っています。

(2025年1・2月定期演奏会プログラム掲載)

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