前音楽監督・上岡敏之がモーツァルトの三大交響曲を取り上げる興味津々のコンサート。むろんモーツァルトは、現音楽監督・佐渡裕が掲げる“ウィーン・ライン”の重要作曲家でもある。この天才最後の3つの交響曲=第39~41番は、僅か2ヶ月ほどの間に完成された奇跡的な名作。“明朗” “悲劇的” “勇壮” と各々異なる性格を持った3曲は、セットで書かれたともいわれているだけに、まとめて聴けば、円熟の筆致による多様な楽想をより深く味わえるに違いない。

今回は、スコアを一から見直して既存の概念を排した音楽を創出する上岡の指揮で堪能できるのも大きな魅力。彼がピアノ協奏曲を弾き振りで披露するほどモーツァルト演奏に造詣が深い点も心強いし、上岡の指揮なら名作の新たな魅力や隠れた本質が浮き彫りにされるであろう。また近年はモダン楽器のフル・オーケストラでこうした楽曲を耳にする機会が減っているので、その意味でも見逃せない公演だ。

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