やらなければならないこと、やりたいことが多すぎて、毎日詰め込み過ぎの“スーパー時短ライフ”です。小さな子どものいるプレイヤーの皆さんは似たような感じかもしれませんが、5時台に起き、娘のお弁当を作って朝ご飯を食べさせて送り出してから、ようやく練習スタート。楽器を吹くことで精神的に落ち着き、整う感じです。加えて、いいなと思う人の本は全部読み、興味をひかれることは知っておきたいので、映画や本(オーディブル)はすべて二倍速。料理に使う時間は15分と決めていて、タイマーを複数同時にかけ、自動調理器や低温調理器を活用しています。移動の電車のなかでは携帯でスケジュール調整やメール返信をしたり、iPadで楽譜を読んだり…。エスカレーターはいつも歩いてしまい、自動ドアが開くのを待てずによくぶつかっています(笑)。せっかちで欲張りなんですね。尊敬する鈴木秀子さんの著作で知った「エニアグラム」によると、私は、効率を愛し成功のために情熱を傾ける「達成する人」に分類されます。音楽家としてはもちろんのこと、いい母親、いい先生でいたいという願望が強いのだと思います。

達成、成功をめざしつつも、その根っこに優しさや愛があることが、私にとっては重要です。子どもにも人の気持ちがわかる、優しい人に育ってほしい。学生を教えるときに大切にしているのもそこで、ひとりひとりの悩みに寄り添い、個性にあわせてモチベーションを上げるアドヴァイスを心がけています。めざしているのは、終わったときにすぐ練習したい!と思えるようなレッスンです。若い頃は技術優先で教えていましたが、子育ての経験から、気持ちに寄り添うことが一番大事だと学びました。

こういう日常のなかで、私には1ヵ月に1日、作業場に籠もる日があります。“リード仙人”と自分で呼んでいるのですが、葦の丸材から切り出し、リードを作っていきます。高校生のときからずっと続けていることで、私の演奏生活はこの作業から始まります。

そして音楽に集中できるNJPでの時間は、今の私にとって最高の贅沢で癒しです。そこには時短ライフとはまったく違う音楽の時間が流れていて、リハーサル、本番と音楽に没入することで、人間として整う感じがします。NJPで仲間と一緒にやっている世界があるからこそ、今まで生きてこられたのではないかな。これからもオーケストラのため、ファゴットのために少しでも力になれるよう、自分ができるかぎりのことをしていきたいです。

(2024年6月定期演奏会プログラム掲載)