2歳の頃、お気に入りのおもちゃのヴァイオリンと

3歳でヴァイオリンを始めてから、音楽はいつも身近にありましたが、オーケストラ・プレイヤーになる道は決して平坦ではありませんでした。けれどもいま思い返してみると、ピンチの時こそ「ここしかない」と戻ってきた場所が音楽だったように思います。

最初の試練は、佐渡さんが芸術監督を務めるスーパーキッズオーケストラのオーディションです。小学生の時ヴァイオリンで受けて不合格になり、怪我の中断もあって一度は諦めていたのですが、中学の時、「もう一度佐渡さんの門を叩いてみたい」という気持ちから、「これに落ちたらもう終わりにしよう」と決意して再度チャレンジしました。ヴィオラならとっていただけると聞いて即座に入団を決めたのですが、ヴァイオリンでは楽に弾けていた音程も弾けず、ハ音記号は読めずで、1年ほどは練習に行くのが憂鬱なほど。友達に会うのが楽しみで続けるうちに、どんどんオケで弾く楽しさに夢中になっていった感じです。

続く試練は2020年~の大学院で遭遇したコロナ禍です。オケのエキストラの仕事もまったくなくなり、これから音楽家としてやっていけるのだろうかという不安が膨れ上がって、普通のバイトをしたり就活をしたりしました。一般職につく可能性を考えていた時に知ったのがNJPのオーディションです。この時も「落ちたらもう音楽の道を諦めよう」という気持ちでのぞみました。幸運にもNJPのメンバーになれたことが夢のようで、さらに偶然にも、佐渡さんと再び一緒に音楽ができるなんて運命かもしれない!と勝手にご縁を感じています。そして、佐渡さんが、子どもに対しても、プロのプレイヤーに対してと同じように全力で接してくださっていたのだなとわかって、とても嬉しく思いました。

ヴィオラとの出会いはこのように偶然でしたが、自分にはとても合っていたと思います。ヴィオラには、ヴァイオリンとチェロの橋渡しをする役目があり、ヴィオラの個性を発揮しつつ、落ち着きどころをみつけるのが難しいところでもあり、醍醐味でもあると思っています。個々のつながりが強く、温かく支えてくださる仲間の存在を、いつも感謝しています。

ふと、音楽家以外の違う人生を歩んでいたかもしれない「もうひとりの自分」が頭をよぎることがあります。仮にそういう選択になっていたとしても、自分は音楽を好きであり続けただろうか……絶対そうに違いないと信じています。一人でも多くの人に音楽で幸せになっていただけるよう、精一杯音楽に向かい合っていきたいと思います。

(2024年1・2月定期演奏会プログラム掲載)