音楽監督・佐渡裕が美しき名曲を満喫させる。前半の「系図」は、家族をテーマにした武満徹晩年の人気作。谷川俊太郎の詩と抒情的で明快な音楽がピュアな感動を呼ぶ。子役としての活躍が際立つ白鳥玉季の朗読、生前の武満の信頼厚かったクラシック・アコーディオンの第一人者・御喜美江のソロも楽しみだし、ベルリン・フィルデビューでも取り上げた作曲家・武満へのシンパシー溢れる佐渡のタクト
にも大きな期待が寄せられる。
 後半は、佐渡がテーマに掲げる「ウィーン・ライン」に沿ったマーラーの交響曲第4番。明るく短めの同作曲家には珍しい作品で、天国的な音楽が陶酔感をもたらす。第4楽章で天上の喜びを歌うソプラノ・石橋栄実の透明な歌声も魅力の1つ。ちなみに今回のゲスト3人は全員同じ曲で佐渡と共演済みという磐石の布陣でもある。

これは佐渡&新日本フィルの今シーズンの定期最後の共演。コンビネーションの深化を知る意味でも注目の公演だ。

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