子どもの時から読書が大好きで、絵本であっても漫画であってもホラー以外のジャンルならなんでも読みますが、まさか自分が漫画のモデルになるとは、嬉しいサプライズでした。友人の編集者が縁をつないでくださり、鈴木のりたけさんの『しごとへの道』で取りあげていただいています。

もともと、いろいろな職業を紹介する絵本『しごとば』で「オーケストラ団員」として取材していただいたのがきっかけで、そのスピンオフとして、この仕事につくまでのストーリーが漫画仕立てで描かれているのが今回の本です。5歳でヴァイオリンを始めてからNJPのオーディションに受かった時のことまで、思い出しながら細かくお話ししました。生まれる前からのアルバムを両親が残してくれていたので、それもお渡しして……。ラフ原稿を初めて読んだ時には泣いてしまいました。例えば、私がオーケストラ・プレイヤーになるきっかけになった出来事、児童合唱団でオーケストラの後ろで歌った話を描いた一枚を見ると、小さい時の私がオーケストラの音に包まれている感じがとてもよく伝わってくるんですね。オーディションの光景も、その場にいらしたかのように描かれていて。のりたけさんの想像力、絵の力ってすごいなと思いました。オーケストラのことも細かく触れられているので、ぜひたくさんの方に読んでいただけると嬉しいです。

10月の室内楽シリーズは、「秘密」をテーマに、ヤナーチェクの「ないしょの手紙」やワーグナーの「ヴェーゼンドンク歌曲集」を取りあげます。ヤナーチェクの手紙を読んだり、作曲家のエピソードを調べたりして、プログラムを組み立てるのはとても楽しく、時間を忘れてしまいます。子どもの時からお話をつくるのも好きで、母によると、よくつくったお話を一人で喋っていたそうですが、そういうことも、プログラムをつくることとつながっているのかもしれませんね。アウトリーチのワークショップで、子どもたちと一緒に音楽をつくっていく時、つくる喜びが彼らに伝わっているといいなと思います。

NJPのメンバーになって15年あまり。忙しい日常がコロナで中断された時、最初の1ヵ月は楽器から離れてみたのですが、そのうち我慢できずにヴァイオリンを手にとったら、今度は食事の時間も惜しんで弾き続けるほどでした。1日中弾き続けるうちに、思っていたよりヴァイオリンが好きだったんだなぁとあらためて気づいたりしました。寂しく辛い時期でしたが、思い返すと自分をみつめる大切な時間になったのかな。いま、お客様から力をいただいて演奏ができる幸せを噛みしめています。一人でも多くの方々と、音楽の喜びを共有できますように!

(2023年9月定期演奏会プログラム掲載)

出演予定