古楽界の雄・鈴木秀美が紡ぐのは、ウィーンの交響曲を中心とした古典派&初期ロマン派の名作。モダン・オーケストラにおける彼の魅力は、古楽の流儀をそっくり移行させるのではなく、ストレートでピュアな音や精緻なアンサンブルといったその美点を応用しながら、引き締まった造型で精彩に富んだ音楽を聴かせてくれること。それは、ポストを持つ楽団のみならず、新日本フィル等でも清新なインパクトを与えてきた。


今回披露されるメンデルスゾーン、シューベルト、ベートーヴェンの作品は、古典派の美感を残しながらロマン派の幕開けを示唆した、鈴木の特長を発揮するに最適な音楽。中でも「未完成」と「田園」は、編成や構成、テンポや奏法によって印象が大きく変わるだけに、彼のアプローチが注目される。しかも両曲は、数ある交響曲の中でもふくよかでしなやかな曲調を有する作品。今回は耳慣れた柔和な感触とは異なる、新たな境地へ誘ってくれるに違いない。

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