2020年3月、日本での演奏会の予定に合わせてロンドンから帰国したのを機に、コロナ禍を日本で過ごすことになりました。それまで、夢や目標に向かって突き進んでいたことがすべて止まり、実家で家族とともに過ごした時間は、これから何をやっていきたいのか、幸せとは何かを考えるきっかけになったように思います。2022年6月、約11年にわたるヨーロッパ生活から拠点を日本に移しました。これまでヨーロッパのオーケストラや、日本ではサイトウ・キネン・オーケストラなどフェスティバルでのオーケストラで弾いてきましたが、日本のプロオケに迎えていただくのはNJPが初めてです。

ソロ、室内楽、オーケストラ、いずれも大好きで、全部できたらいいなと、子どもの頃からいろいろなチャレンジをしてきました。室内楽での印象的な体験は、高校1年で参加した「サイトウ・キネン若い人のための室内楽勉強会」です。初めて会う先輩たちと一緒にカルテットを弾き、みんなで一緒に考えながら、少しずつ自分の音楽を表現していけるようになった時の楽しさ。年齢や経験の差、言語や国籍の違いに関係なく、音楽の仲間になれることを教えていただきました。室内楽に弦楽合奏など小澤さんの指導をたくさん受けることができたのも大切な思い出です。中学生の時には、雑誌の募集を見てスーパーキッズオーケストラに参加し、佐渡さんの指揮でコンサートマスターを務めたこともあります。

オーケストラで弾く楽しさは、なんといっても仲間との音楽の対話ではないでしょうか。一人一人が自分のベストを発揮しながら、お互いに助け合い、一つのものをつくりあげていくプロセスはとても刺激的です。ドイツ、イギリス、北米と様々な国の素晴らしいオーケストラで演奏して学んだことは、まず周りに共感して一緒に弾いてみること、そのなかで自分の音楽や指揮者の方からのアイディアを精一杯表現してみることです。自分をしっかり保ちつつ、まわりの音に敏感に反応し、呼応しながら演奏する柔軟さをもつことが大切かなと思います。

NJPでもメンバー一人一人が自発的に音楽を発信されているのが感じられ、自分一人で弾いているときにはない刺激をたくさんいただいています。ヴァイオリンは2人で一つの譜面を見て弾くので、隣同士、影響し合うものが多くあるんですね。アシスタント・コンサートマスターとして、コンサートマスターの方々に、この人の隣だと弾きやすいなと思っていただけるよう、心地よく万全のパフォーマンスを発揮していただけるように心がけています。そしてこれまで出会うことのできた素敵な音楽家の方々のように、常に学びを忘れず、音楽的にも人間的にも成長していけるよう、精進していきたいです。