トランペットは青森の小学校の吹奏楽部で始めました。サックスをやりたいと部活見学に行って、いろいろな楽器を吹かせてもらったところ、なぜか僕だけトランペットの音が出せてしまったんです。10分ほど吹いているうちに、ドレミファソラシドの音階も先輩に教えてもらいながら吹けるようになっていました。そこをちょうど顧問の先生が通りかかり、トランペットでの入部を強く勧められたのが始まりです。トランペットを吹いたのはその時が初めてでしたが、3歳上の姉がテューバを吹くのを見て、金管楽器の音を出す仕組みをなんとなくわかっていたのかもしれません。小学6年の時、文化庁の巡回事業で仙台フィルを聴き、楽器を吹くことを職業にできたらいいなと思うようになりました。

そう思いつつも、中学、高校とずっと部活で吹くだけでレッスンを受けずにいる僕を心配した姉が友達に相談してくれ、その方を通じて先生を紹介していただきました。将来の師となる内藤知裕先生です。こうして大学へ入学して初めて個人レッスンを受けることになったのですが、最初のレッスンで先生の音を聴いた時の衝撃は今でもよく覚えています。
─オーケストラプレイヤーってこんな音が出せるんだ! 高校でジャズにはまり、ジャズプレイヤーへの道を考えていたこともあったのですが、その瞬間、将来の夢はオケプレイヤーと、しっかり目標が定まりました。

その後、桐朋のオーケストラ・アカデミーで勉強しながらコンクールやオーディションを受けていましたが、なかなか思うようにいかない日々が続きました。焦りがつのり、もう諦めたほうがよいのかなと思い詰めた頃、少しずつ手応えが感じられるようになったのです。アカデミー3年目にコロナでの中断がありましたが、コロナ禍の期間も、スキルアップするための時間がたくさんできたと、ポジティブに捉えることができました。コロナでの長い自粛期間が明けて少しずつ日本のオケも活動し始めた頃、エキストラとして何度もNJPに呼んでいただき、市川さんと杉木さんが温かく見守ってくださっていたおかげもあり、前向きに演奏活動を続けることができたと思います。本当に感謝してもしきれない気持ちです。

2022年12月から首席奏者として正団員となりました。学生時代からよく聴いていた憧れのNJPで、一日も早く「山川が入って良かった」と思っていただけるような存在になりたいです。歴代の首席トランペットの方々がそうであったように、僕がNJPをひっぱっていけるようになった時、NJPがどう変わっているのか、とても楽しみです。そのための努力はどんなことでも続けていきます。

(2023年5月・6月定期演奏会プログラム掲載)

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