持ち前の分析力に近年味わいを加えている敏腕指揮者・沼尻竜典が、濃密なプログラムを披露する。最初のシベリウスのヴァイオリン協奏曲は、パッションと清涼感を併せ持つ傑作。今回はニールセン国際コンクールで優勝した2000年スウェーデン生まれの俊才ユーハン・ダーレネがソロを弾く。シベリウスは彼がCD録音で豊潤な快演を展開している得意の演目。ここは新スターの妙技にいち早く触れる喜びも味わえる。
後半のメンデルスゾーンの交響曲第2番「讃歌」は、第4番「イタリア」より後の円熟期に書かれた、声楽付きの感動的大作。管弦楽による3楽章の「シンフォニア」の後にカンタータ楽章が置かれた、ベートーヴェンの「第九」に似た構成がなされている。音楽自体は劇的で親しみやすいし、沼尻が長く芸術監督を務めたびわ湖ホールのオペラで実績あるソリスト陣と2つの合唱団の歌声も大きな聴きもの。生演奏の機会が稀な名曲を、ここでぜひ体験したい。