たくさんのお客様をお迎えして新シーズンをスタートすることができ、本当に感謝の念に堪えません。コロナ禍で公演ができない恐怖に駆られていた時期のことを思うと、胸がいっぱいになります。これからも皆さまに応援していただけるよう、挑戦を忘れず、熱量の高い演奏を続けていきたいです。諸先輩たちが築いてきたNJPのDNAをどう受け継いでいくか、佐渡さんと一緒にどれだけいいものを作っていけるか、これからが正念場だと思っています。

コンサートは通常開催できるようになったとはいえ、コロナの影響は目に見えないところに残っていて、まだまだ、のびのびした雰囲気や密なコミュニケーションを取り戻せていないように思います。日常の何気ない会話のやり取りがいかに大切だったか、痛感しています。NJPらしい積極性を早く取り戻して、さらなる高みをめざしたいですね。新しい楽員も増えたので、感染対策を慎重にしながらも、舞台裏のコーヒータイムや本番後の飲み会を少しずつ復活させていければいいなと思っています。

小澤さんがおやめになる時、みんなの前で「オケがダメになるのはあっという間、よくするのはとてつもない時間と労力がかかる」と話されたのですが、改めてその言葉の重みを身にしみて感じています。自分たちにできるのは「1ミリでもいい演奏をする」よう努力すること。そのために時には厳しいことを言ってしまうこともあるのですが、常に緊張感をもって、身を粉にして演奏をよくしていかないといけない、と覚悟を新たにしているところです。

僕の原点はモスクワに留学していた時に出会ったロシアのオーケストラの響きで、こんな音がするのか!と完全にやられました。2000年からNJPのソロ・コンサートマスターを務めていますが、いいオーケストラを作りたい、それを皆さまと共有したいという気持ちは強くなるばかりです。行くべき道は明確なので、これからも決して楽な方に流れることなく、ブレずに進んでいきたいと思います。

目標は、この数年でもっとクオリティを高めて確固たるステータスを築き、その上でヨーロッパツアーを実現させることです。若い楽員たちにも、ぜひ世界の評価を自分たちの体で感じてほしい。そのことがさらなるステップアップにつながると信じています。

(2023年4月定期演奏会プログラム掲載)