好きなことをやっているからこそ絶対に逃げない。迷う時は「楽ではない道」を選ぶ

 僕が中学生の頃から指針としていることです。好きな音楽を仕事にできている幸運を噛みしめながら、これからも、この指針を忘れずにいたいと思っています。

 オーボエは、10歳の時、アマチュアで弦楽器を弾く両親から薦められ、浜松のジュニアオーケストラで始めました。わりとすぐ吹けるようになって、中学に入る頃には1番オーボエを任せてもらえることが多くなり、オケの一員としてどう演奏するか、バランスよく学ばせてもらうことができたことは、その後の勉強にとても役立ちました。

 楽器もそこそこ吹けて、勉強もそこそこできる、器用な子供だったと思います。自分でもそれがわかっていて、このままでは、頑張らない人生を漫然と送ることになるのではないかという危機感がありました。一番好きなもので勝負に出て、挫折を味わったりしないと、自分の本当の姿が見えてこないのではないか。より充実した人生を歩むために、自分が頑張れるものは何だろうと考えて選んだのがオーボエです。中学生でそう決めた時から、自分が好きで選んだ道なのだから、自分を高め続けたいと思ってきました。

 とはいえ、プロになる道は甘くなく、自分のスタイルを模索する日々が続きました。オーボエは、アメリカ、ドイツ、フランスのスタイルがあり、それぞれリードの削り方、体の使い方などが異なります。最初にアメリカン・スタイル、大学ではドイツ・スタイルで学び、留学したドイツで当時ヨーロッパに流行していたフランチ・スタイルに触れ、さまざまなスタイルを受け入れたことで、大事なのは、自分がどうありたいか、何が美しいかなのだと気づいたことで、自分の表現にたどり着いたように思います。

 留学から帰って入団したのが、佐渡裕さんが芸術監督を務める兵庫芸術センター(PAC)管です。PACは個々のプレイヤーに対して佐渡さんが長期ヴィジョンを組んでトレーニングしてくれる組織で、プロのオケ・プレイヤーとして何が足りないのか、みっちりアドヴァイスを受けることができました。これからNJPで佐渡さんとどのような音楽づくりができるのか、ワクワクしています。

 NJPには今年5月から正団員になりました。NJPは、楽員の熱量が高いオーケストラで、みなが表現することを諦めないところが最強ポイントだと思います。いつも前向きに発信、表現しているNJPがとても好きです。その一員として、積極的に音楽に挑んでいきたいと思います。

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