このオペラを作った動機はただ一つ、(育ての)父親正義さんの死後、彼の真実に対して理解が浅かったことを知り、このままでは私がこの先死ぬことも生きることもならない、彼の人生と時代を何か形にしなければと感じたからです。それまで交響作品を3曲しか書いていなかった私ですし、オペラを書くのは本当に無謀なタスク。台本も自分で作り、私小説的なものから普遍性のあるものへ高め上げようと四苦八苦、作曲と共に大変なのがそれでした。

途中自分も病気で世の中の見え方も変わり、中断し、3回以上書き直し15年ほどかかりました。

でもそんなこと何の価値もありません。良い作品かどうかがすべてです。

アンサンブル金沢で初演と書き始めたのですが、今回50周年記念でこの作品を新日のホームタウン墨田でフルオペラ上演をするという申し出を受けて大喜びです。

さすが花火大会をやる場所だ。僕にとっては一生に一回の三尺玉!シカゴでのマーラー九番指揮を上回る。内容は今を生きている人ならば誰にでも入り込めると思います。

過去の名作に肩を借りずに、日常の毎日にこそ芸術が息ついていることの表現を試みました。

囲まれている実世界の環境に溺れることのない強い自由への希求と、人間にだけ許される愛というものの正体を、音楽物語にして両親、正義+みち子に捧げるものです。

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