その音を聴いたのは、小学校3年頃、当時習っていたスズキ・メソードの全国大会が行われた日本武道館でした。
初めてみるチェロという楽器と、体の大きい外国人の姿に惹きつけられて、思わず近くに寄っていってしまった僕を、アンドレ・ナヴァラは「いいよ」とそばで聴くことを許してくださったのです。
思いがけず目の前で聴いた巨匠の演奏は、全身の毛孔が開くほどの衝撃でした。チェロの力強さ、音のきめ細かさに体中でしびれたのを覚えています。

 

その会場で母に買ってもらったのが、ナヴァラが日本歌曲を弾いたLPです。
その音は、あたかも日本語の歌詞を日本人以上に理解しているかのように、やさしく語りかけて弾く音に、子ども心に目頭が熱くなりました。
それ以来、思い出すたびに針をおろして、大切に聴いてきたレコードです。

小学校当時の僕は、プロの音楽家になることまで考えていませんでしたが、ナヴァラの演奏に出会ったことで、「人の心を打つような音」「言葉を語るような演奏」がいつかできるようになりたいと思い始めました。
とはいえ、現実の道のりは厳しく、音楽大学には入ったものの優秀な同級生のなかで落ち込むばかりでしたが、励ましてくれた友人たち、辛抱強く面倒をみてくださった恩師のおかげでなんとか卒業。
幸運にもNJPに入団することができ、早くも20年の時をNJPで過ごしています。
偉大な演奏家たちと出会い、貴重な体験をたくさんすることができましたが、なかでもボッセ先生が「スピーキング!スピーキング!」(言葉を語るように雄弁に!)と強調されたことは深く印象に残っています。
そしていつも、聴衆のみなさんが、われわれが一所懸命に演奏できる温かい雰囲気を作ってくださっていることに感謝しています。

 

これからも、「音を言葉として表現する」という理想に一歩でも近づけるよう精進して、オーケストラ生活を送りたいと思います。

小学校当時の僕は、プロの音楽家になることまで考えていませんでしたが、ナヴァラの演奏に出会ったことで、「人の心を打つような音」「言葉を語るような演奏」がいつかできるようになりたいと思い始めました。
とはいえ、現実の道のりは厳しく、音楽大学には入ったものの優秀な同級生のなかで落ち込むばかりでしたが、励ましてくれた友人たち、辛抱強く面倒をみてくださった恩師のおかげでなんとか卒業。
幸運にもNJPに入団することができ、早くも20年の時をNJPで過ごしています。
偉大な演奏家たちと出会い、貴重な体験をたくさんすることができましたが、なかでもボッセ先生が「スピーキング!スピーキング!」(言葉を語るように雄弁に!)と強調されたことは深く印象に残っています。
そしていつも、聴衆のみなさんが、われわれが一所懸命に演奏できる温かい雰囲気を作ってくださっていることに感謝しています。

 

これからも、「音を言葉として表現する」という理想に一歩でも近づけるよう精進して、オーケストラ生活を送りたいと思います。