─言葉のない「指環」~ニーベルングの指環管弦楽曲集について、どのようなところが好きか、ドイツなど海外で演奏した時に印象に残っていることなどを教えてください。
(上岡)ワーグナーのオーケストレーションが特別で、言葉が無くても、物語を感じられることが素晴らしいと思います。
ドイツでは、楽劇を上演したことはあるのですが、オーケストラだけの版で演奏したことはありません。デンマークのコペンハーゲンフィル時代に取り上げました。プラクティカルな面だけですが、声楽家とのバランスを取る必要がなかったことに関しては、とても楽でした。
ただ、テキストが無い分、ワーグナーの多面性を表現するのに苦労しました。音だけ聴いていると意外にもイタリアオペラのように感覚的に感じ取れますが、セリフは、実は音楽と逆のようなところが多々あります。また、ワーグナーは、当時の新訳から自分で台本をつくっているのですが、そこで使用されているドイツ語は旧ドイツ語で、音だけですべてを表現することは、ほとんど不可能です。
─RaiBoC Hall(市民会館おおみや)で指揮するのは初めてかと思います。ヨーロッパを含めさまざまなホールで指揮してきた上岡さんですが、初めてのホールで演奏するとき、どんな気持ちになりますか?
(上岡)私にとって初めてのホールで演奏する時というのは、ピアノを弾く時と似ています。
世界中どこに行っても、必ずスタインウェイのピアノがあるのですが、機構は同じでも人間がそれぞれ違うように、ピアノもすべて異なっています。同じホールの同じピアノでも、いつも同じではありません。先ずお客様が入っていない状態で、私がホールの状況を確認して、演奏会が始まった後は、臨機応変に対応する必要があります。 ものすごいプレッシャーですが、最善の努力を試みるつもりです。
─2024年10月の上岡さんモーツァルト・プログラムが満席だったことを含め、「すみだクラシックへの扉」の好評を受けて、今回大宮での公演が実現しました。ご来場をご検討くださっている方にメッセージをお願いします。
(上岡)今の時代にも戦争があり、いつの時代も似たようなものですが、今回は神様達が終焉を迎えるドラマです。ワーグナー自身が反ユダヤ主義、反権力主義(意外と利用できるところには、上手く立ち回っていた気もするのですが)、女性の献身的な愛による救済、勇敢なヒーローによる新しい世界の実現等々、きっとそれぞれの方々がいろいろなご意見をお持ちでしょうから、この演奏会にいらして下さり、皆様と共に世界平和を願う事ができればと思っています。
「鬼才」と呼ばれる上岡敏之がタクトを執り、音楽に秘められたドラマを描き出す――。音楽だけで物語を紡ぐ、特別な演奏会です。かつて音楽監督として幾度も新日本フィルと演奏したすみだトリフォニーホール。そして今回、上岡敏之が初めて登場するRaiBoC Hall。ふたつのホールで、新日本フィルとの新たな音楽の扉が開きます。一音一音から立ち上がるドラマを、ぜひ生のオーケストラでお聴きください。
ワーグナー(マゼール編曲):言葉のない「指環」~ニーベルングの指環管弦楽曲集
※本公演に休憩はございません。