演奏会当日にお配りするプログラムノート(曲目解説)を一部公開いたしました。

執筆:小室敬幸(音楽ライター)

■独奏…アレクセイ・ゲラシメス(1987〜 ):アスヴェンチュラス(2011年出版)

ドイツ出身のゲラシメスはソリストとして活躍する打楽器奏者。チェリビダッケ時代のミュンヘンフィルでティンパニ奏者を務めたペーター・ザードロ(1962〜2016)の弟子で、2017年からは亡き師を継いでミュンヘン音楽・演劇大学で教授を務めている。既に日本の若い打楽器奏者たちもレパートリーにしている《アスヴェンチュラス Asventuras》は、スネアドラム1台と様々なバチの可能性を「冒険 Adventure」するかのように追求した楽曲だ(Adventureの最初と最後をasに変えると曲名になる)。

■四重奏…アンソニー・J・シローン(1941〜 ):4人のための4/4(1969)

 アメリカのシローンは、1965〜2001年までサンフランシスコ交響楽団に在籍していた打楽器奏者。作曲家としては60作品以上残しているが、最も演奏されているのがこの曲だ。原題は「4/4〔four four〕for Four」という言葉遊びになっており、4人の奏者が4分の4拍子のなかで多彩なリズムを奏でる。

■五重奏…マーク・フォード(1958〜 ):ヘッド・トーク(1987)

 アメリカのフォードは、打楽器芸術協会(Percussive Arts Society)の会長も歴任したマリンバ奏者。この曲は胴のないドラムのヘッド部分が楽器となる。客席から見て右から左に、第1〜5奏者(高音から低音)になるように並び、5人がトークするように――指揮者無しでアイコンタクトによって――演奏するのだ。

■四重奏…濵口 大弥(1987〜 ):Eight in the BLACK(2024年出版)

 香川県生まれの濵口大弥は東京藝術大学出身の打楽器奏者。自ら結成したアンサンブルなどで演奏活動を行うほか、作曲家としては打楽器アンサンブルを中心に様々な楽曲を手掛けている。曲名は、ダーツで最も難しいとされる「Three in the BLACK」(1ラウンド中に、ボードの中心にあるブルの内側へ3本連続で入れること)がもとになっており、スティックを矢、スネアを的に見立てて作曲したという。

■ジョン・ケージ(1912〜92):4分33秒(1952)

 アメリカのケージは、それまでの音楽の概念を塗り替えてしまうような実験音楽で知られる作曲家。若い頃からコンテンポラリーダンスのために打楽器やプリペアド・ピアノを用いた音楽を多く手掛けた。ハーバード大学の無響室や、画家ロバート・ラウシェンバーグがキャンバスを真っ白に塗った『ホワイト・ペインティング』(1951)などから示唆を受けて生まれたのが本作で、タロットカードに書いた数字をめくって加算した結果、4分33秒という長さになったという。

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