NJP50周年、すみだトリフォニーホール25周年を記念して、23年1月に世界初演されるミュージカル・オペラの制作発表会が、10月24日すみだトリフォニーホール・小ホールで行われ、総監督(指揮/脚本/作曲/演出/振付)を務める井上道義氏から作品内容、キャスト紹介など、新作の詳細が語られました。

『A Way from Surrender~降福からの道~』とは?

 マエストロ初のミュージカル・オペラとなる本作は、2009年からまず台本が書かれ、そこからオーケストレーション、ヴォーカル部分が作曲されました。「降伏」を意味するSurrenderはマエストロの発想で「降福」となり、「ひとつの道」を意味するA Wayには、Away(離れて)のニュアンスも込められているようです。

 マエストロ自身のあらすじを引用すると、

「降福からの道」という如何にも2重性を思わせる造語は、私が育てられた両親に隠された出生の真実、育ってきた戦後のGHQ作成の憲法下での偽善的な平和、中年から影響を受けたショスタコーヴィチの2枚舌的作品群、京都という町での経験、等から生み出されたと思っていただきたい。

©︎星ひかる

 ヴォーカルスコアの表紙に、母親に手を引かれる幼少期のマエストロ(らしき)の写真が切り抜きで刷られているのが印象的です。

テーマは「赦し」

 創作の背景には、父親の死後、実の父親でなかったと知ったことでマエストロが体験したアイデンティティ・コンプレックスがあり、本作が亡くなった父親へのトリビュートであること、「赦し」が作品の主題であることが語られました。「赦し」とは、他人を赦すだけでなく、自分を赦すこと。自分の「能力の足りなさ、馬鹿さ加減、そして欲望にあらがえずに犯してきたこと…」を赦し、前に進もうとすることであると。そこに、マエストロは「敗戦後の日本の姿」を映し出しているようです。
 主役のテノール、タロー(岡本太郎をイメージ)には井上道義自身が投影され、父・正義(バリトン)、母・みちこ(リリック・ソプラノ)というように、井上道義の両親が実名で登場します。第1幕と第3幕はタローのアトリエ、第2幕は戦時中のフィリピン・マニラが舞台となります。マニラは、マエストロの両親が実際に戦時を生きた土地です。

豪華キャストの饗宴

 若手実力派たちによるキャストが世界初演に華を添えます。制作発表会には、豪華キャスト陣から大西宇宙氏(正義役)、小林沙羅氏(みちこ役)、コロンえりか氏(ピナ役)が出席。ピアノ伴奏で1ナンバーずつ披露するとともに、マエストロとの出会いやこれまでのコラボレーション、そして本作への抱負を熱く語りました。
 公演は、1月21日(土)すみだトリフォニーホールがミュージカル・オペラ(オペラ形式)、23日(月)サントリーホールは演奏会形式での上演となります。

詳細はこちらをご覧ください。

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