「降福からの道」という如何にも2重性を思わせる造語は、私が育てられた両親に隠された出生の真実、育ってきた戦後のGHQ作成の憲法下での偽善的な平和、中年から影響を受けたショスタコーヴィッチの2枚舌的作品群、京都という町での経験、等から生み出されたと思っていただきたい。

話はまったくのフィクションではないが、作り話とも言えない自作の台本。台本を作ってから音楽を直接オーケストレーションしました。 歌の部分は曲を作ってからぢ本に逆にはめ込みました。汚い手書きのそれを萩森英明さんに解読していただきながらシベリウスで印刷までもっていっていただき、総てが出来上がってからピアノスコアを前田佳世子さんに頼み、ハッスルコピーの中島由香さんがどちらもを見やすいものにしてくれました。

<第1幕>

主役はテノール(工藤)、アートに対する発言がいつも的確だった岡本太郎さん=実は井上道義自身=であるタロー。彼が海岸近くのアトリエで絵を描いているところから始まる。そこへモデルのエミとマミがやってきます、二人の個性はぶつかりながらも明るく、嬉々としてタローの絵の為ポーズをとっている。夢想家のタローは絵を描いていると、彼が過去に描いた彼の両親の肖像画を何処からか小さな少年が持ち出すように感じます。おかしな行動を見せるタロー、にモデルが近づくと整理整頓の悪い画材などがまるで地震があったように崩壊…彼の上に重くのしかかります。額が歌い、彫刻が歌い、鳥達と声を合わせます。彼は苦し身もだえ、肖像画からは両親が亡霊のように現れ、そのまま時空は昔のマニラに移動します。

休憩

<第2幕>


マニラの井上の家にはベランダがあり冷房もない時代、夜、正義とみち子は友人たちと談笑しながらダンスをしています。ピナという女は彼のお気に入り。友人達も熱帯の夜をデカダン風に飲みながら戦時中の動きの取れない毎日を歌います。みち子は1人女癖の悪い正義を遠くから編み物をしながら見守ります。外で大騒ぎ!どうやら誰かの盗みが見つけられたようです・・・なんとピナがピストルを盗んでいたのです。騒ぎを解決したのが正義。みち子は部屋に戻りましょうと諭すが、戻るって何のために、何処に戻るのだ、俺には故国がない!と嘆く正義。米国生まれの日本人。戦争で引き裂かれる思いの中に居るのです。

更に街の人たちも引き込みお酒を飲んでの大騒ぎ(2つの合唱曲)が盛り上がった所に米軍の艦砲射撃であたりは崩壊!沢山の人々が死に、怪我を負います。正義も大怪我。そこに上陸してきた米軍の救護兵らしい男にみち子は間髪を入れずに捕らえます。それが彼と彼女の出会いのダンスとなり幕間劇へ進み第三幕。

<第3幕>

1幕と同じアトリエ、同じ時。タローがモデルの絵を描いていると本当の正義とみち子が訪問して来る。そこでみち子も正義もモデルたちに質問されても過去の記憶に触られることを嫌う。神を疑う歌、愛を疑う歌、芸術至上主義の歌、いつの間にか現れた民衆は 「絵空ゴット」とシニカルな歌。でもタローの前にあるのは子供のころから泳いできた音楽の海原。オーケストラによってそれらが色々なスタイルで表現され奏でる。 愛とは、外にあるのではなく自分を許し相手を許すという行為の中にあるものだと父親の生き様を肯定し芸術も生命も爆発だと祈るように歌う。

出演者全員が讃美歌461に乗せて、直ぐそこの死の世界からの満ち潮を歌って・・・

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