片桐卓也 の ≪鑑賞のツボ≫
「すみだクラシックへの扉」シリーズでは、名作だけでなく、普段あまり接する機会のない隠れた傑作も紹介されるが、第8回では古典派音楽を確立したベートーヴェンの協奏曲と、日本の「今」を代表する作曲家である吉松隆の作品がカップリングされた。指揮するのは日本生まれで、ウィーンとアメリカで研鑽を積んだ中堅のキンボー・イシイ(現在はドイツ、シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州立劇場音楽総監督)。彼はタングルウッドで小澤征爾の薫陶も受けた。
ベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲」は古今の協奏曲の中でも難曲と言われるが、若手の周防亮介が挑む。素晴らしい音色とテクニックの持ち主で、ベートーヴェンの新しい魅力を教えてくれるだろう。後半では吉松隆の「鳥は静かに…」と交響曲第6番「鳥と天使たち」が演奏される。「鳥」は吉松にとって「飛びながら歌う自由な存在」であり、彼の作品の核をなす存在。透明感のある、繊細な水彩画のような音の世界が広がるだろう。