NJP楽員ストーリーズ

「あとふたつの顔」by 佐藤和彦(NJP首席テューバ奏者)

「あとふたつの顔」

佐藤和彦(NJP首席テューバ奏者)

10年ほど前から大学で教えるようになり、教師としての顔が加わりました。今は東京と岡山、熊本の4つの大学で学生のレッスンを受け持っています。

吹いて教えるのが僕のスタイルです。言葉ではなかなか伝えにくいので、「こうしたらどうだろう」と吹くことで伝えています。そして、学生の吹き方がいいと思えば、たとえ自分と違っていても、それを伸ばすような導き方を心がけています。教師の役割とは、学生たちの個性やいいところを発見すること。僕自身、その発見を楽しみにレッスンをしています。そして「気づき」をうながすことですね。サボっている生徒には、どれくらい出来ていないのか、自分で気づかせる。いたずらに厳しくして緊張を強いるのは好きでないですが、現実を突きつけるのは、シビアにやるようにしています。

教えることで、僕自身にも「気づき」がありました。それはオーケストラがこんなにも好きだったのだということです。朝からNJPの練習があり、その後、学生のオーケストラスタディをレッスンするときなどは、朝から晩までオーケストラ曲を吹き続けることになるのですが、まったく苦にならないどころか、本当に楽しい!学生に「ここはどうやって吹くんですか」と聞かれてあらためて発見したアイデアを、NJPでの演奏にフィードバックしたりできるのも、教えるようになってからの収穫です。将来、音楽家になる以外の職につく子たちも多くいますが、好きな音楽に夢中になって、一所懸命力を尽くした経験を、これからの人生に生かしていってほしいなと思います。

もうひとつは、9歳と3歳の子どもの父親としての顔です。どんなに疲れていても、子どもの顔を見ると吹き飛んでしまいますね。あっという間に成長していきますので、今しかない時を逃さないよう、家族と過ごす時間を大切にしたいと思っています。

7月のジェイドでは、ヴォーン・ウィリアムズの協奏曲でソロを吹きます。レッスンでもよく取り上げる定番曲で、特に2楽章が美しく、柔らかい弦のアンサンブルにのってソロを吹くのはテューバ吹きの醍醐味です。そしてなんといっても、自分のオーケストラで協奏曲を吹けるのは最高!ぜひ聴いていただけると嬉しいです。

(2020年7月)

※2020年2月13日取材。3-4月コンサートプログラムに掲載しておりましたが、コンサートがキャンセルとなりましたので、今回あらためて再掲載いたしました。