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特別インタビュー

指揮者 ベアトリーチェ・ヴェネツィ氏インタビュー(ルビー #24)

指揮者 ベアトリーチェ・ヴェネツィ氏インタビュー(ルビー #24)


7/12(金)、13(土)の定期演奏会 ルビー<アフタヌーン コンサート・シリーズ>#24の指揮者ベアトリーチェ・ヴェネツィ氏にインタビューを行いました。


ヴェネツィさんが指揮者になろうと決めたきっかけはどんなことでしたか?

 

指揮者になろうと決めた瞬間は、覚えていません。私の家族には音楽家がいないので、私が子供のころにピアノを始めたのは偶然のようなものでした。その後、音楽が正しい「言語」だと理解しましたが、ピアノの鍵盤は私にとって自分を十分に表現するには足りませんでした。私の考えや気持ちを描写するにはもっとさまざまな音色が必要で、それはオーケストラでのみ可能でした。指揮は私にとって、本能的に欲しているものです。私にとって指揮は自由そのものです。

常に私にとって明確だったのは、仕事をするために仮面を被ることも、男性用スーツを着ることも必要ないということでした。私自身の自然なあり方を隠す必要もなく、ただ可能な限り明確に「自分」であり、自分の直感についていけばよいということです。

 ヴァチカンの女性文化審議会のメンバーとしての活動は、ヴェネツィさんの音楽家としての考え方にどのような影響を与えましたか?

 

音楽には社会的な面があり、寛容さと革新という2つの重要なメッセージを持っています。

アルメニアの青年国立オーケストラで副指揮者になったこと、そしてジョージア、アゼルバイジャン、イランなどで指揮者としてステージに上がり、一般聴衆から喝采を受けたことは、何よりもその国々の女性に対する差別の根絶に繋がることだと思います。

音楽は、異なった宗教や文化の間の「対話」を生み出します。音楽という「言語」が持つ力を信じ、よりよい世界への革新について自ら宣言をしたいと思います。このヴァチカンの審議会に最初のゴールとして宗教を超えた対話を提言して参ります。特に女性が本来持っている繊細さと直感を活用し、その価値を証明していきたいと思います。

 

イタリアの作曲家ニーノ・ロータの「道」ではじまり、アルゼンチンのヒナステラ、スペインのファリャという、ラテン風味あふれるプログラムです。ヴェネツィさんが思う、それぞれの曲の魅力を教えてください。

 

これらの3つの曲の共通点は“南”になると思います。

組曲「道」は実はフェデリコ・フェリーニのオスカー賞を受賞した非常に有名な映画からきています。ニーノ・ロータは20世紀の真の天才だと思います。ロータの音楽、特にこの曲はイタリア・オペラの伝統の反映や、ロータが長年住み、音楽教師をしていた場所である南イタリアのバンドの伝統、さらにジャズやロシア音楽(特にショスタコーヴィチやストラヴィンスキー)の反映が見られます。今年はロータの没後40周年となりますので彼を記念する良い機会だと思いました。

ヒナステラのハープ協奏曲もとてもユニークです。ハープというと、よく天使と結びつけられますし、その音色はしばしば“天国のような”と定義付けられます。しかしヒナステラはハープを新しい方法で使っていて、ダンスのようなリズムと打楽器的な激しい音で大地を打ちます。サウンドボード(表面板)を叩いたり、爪のグリッサンドなどの効果音を使ったりすることにより、ハープが典型的な南アメリカのダンスの一部に変化していきます。この曲は以前のハープ協奏曲とは全く別のものとなりました。

『三角帽子』は南スペインが舞台となっていて、ファリャは曲全体を通してフラメンコ音楽の伴奏によく用いられるカンテ・ホンドなどのアンダルシアの伝統音楽やホタ、ファンダンゴ、ファルーカ、セギディーリャスなどの典型的な音楽形式を使っています。この刺激的で、鮮明で、カラフルな音楽は非常に絵のように美しいです。

これらの3つの曲は一体となって、これらの南ラテンの国々への音楽の旅にみなさんを誘います。イタリア、スペイン、アルゼンチン、この3つの国々には強い関連性がありイタリアとスペインの両方の伝統が溶け合っています。

ヴェネツィさんと同じ世代の人々にも、もっとクラシック音楽を聴いていただきたいと私たちは思っています。同じ世代の人々へメッセージをお願いします。

私はクラシック音楽という偉大な文化、芸術財産を愛し、尊敬しています。私はすべての世代を一体にするという使命をもっています。クラシック音楽に対しての偏見や壁を取り除き、新しい、もっと近づきやすく、お堅い感じのしない、フレンドリーな文化の確立を願っています。

私はクラシック音楽に対しての、時代遅れで、近寄りがたくて、つまらないジャンルなどといった、すべてのありきたりの文句に挑戦しています。

私のミッションは、クラシック音楽のイメージをモダンなものにするという目標をすべてのメディアを使って達成することです。クラシックに関わっていないラジオやテレビでも、クラシック音楽を流してもらうように努めています。また、学究的な世界から長年軽んじられてきた新しいメディアやチャネルも積極的に使っています。

例えば、有名なオペラの筋を考えてみましょう。すぐにみなさん気付くと思いますが現代の映画やテレビ番組、歌、ニュースでも同じような筋立てを語っています。

私から同世代の人たちへのメッセージは「好奇心旺盛になってください」ということです。

人生で一度でもよいのでホールに足を踏み入れ、生のコンサートを体験し、オーケストラの楽器から出てくる音を体感してみてください。人生で初めてのクラシック音楽体験を。必ず感動させてくれるはずです。決して離れられなくなるでしょう。

 

ヴェネツィさんに大きな影響を与えた音楽家について。

私は1990年にイタリアのルッカで生まれ、同じルッカ生まれのジャコモ・プッチーニに深い愛着をもっています。「私はパンとプッチーニで育った」とよく宣言してきました。プッチーニと私は似ているところがいくつかあります。様式に対しての情熱を持っているところや、さまざまな音楽、文学、旅行、他の芸術分野との融合などを愛しているところです。私とプッチーニは同じ出身地で結ばれていて、世界各地でプッチーニの作品を取り上げると、彼のオペラの「女性」というテーマについて考えさせられます。プッチーニはオペラの作品の中で、女性に重要な役を与えた最初の作曲家です。彼のオペラのヒロインには、彼自身の心理や性格がまさに浮き出ていると思います。そのような意味で、プッチーニはずっと私の先導者であったと信じています。

演奏会情報

7/12(金)13(土)両日14:00開演 すみだトリフォニーホール

指揮:ベアトリーチェ・ヴェネツィ、ハープ:吉野 直子*、メゾ・ソプラノ:池田 香織◆

 

プログラム

ニーノ・ロータ:組曲「道」より抜粋
ヒナステラ:ハープ協奏曲 op. 25*
ファリャ:バレエ音楽『三角帽子』全曲◆

#24 ルビー